手術室で働いている、というとだいたい「ドラマでメス渡す人」と言われます。
それは、「器械出し看護師」「手洗い看護師」「直介(直接介助)」と言われる仕事。
もう1人、マルチな働きをする「外回り看護師」がいます。
今日は、
- 「外回り看護師」の仕事って何?
- まりまが考える外回り看護の面白さ
についてお話ししたいと思います。
オペ室業務…「外回り看護師」とは?
施設によって、外回り看護師は「麻酔係」「受け持ち看護師」「記録係」など様々な呼び方があります。
呼び方に違いはあれど、やっていることは同じ。わたしは「器械出し以外のオペに関するすべての仕事を統括する」ことが外回り看護師の仕事と考えています。
術前日まで
- 術式に合わせた手術体位固定のための物品、麻酔方法に合わせた物品・薬剤の準備
- 患者さんの背景に合わせた必要物品(体型や既往歴、手術体位・患者さんの関節可動域に合わせて必要な物品が異なります)
- 手術室の準備(電メスやタニケット、麻酔器などのME機器の準備、体位固定具の準備)
- 麻酔科医の麻酔方法に合わせた物品の準備
- 病棟の患者さんのもとへ術前訪問に行く
基本的に、麻酔科医の指示や術式に合わせて必要な物品を準備します。
麻酔科医によって手技は微妙に異なることが多く、たとえば気管挿管1つとっても使用するデバイスは何か?喉頭鏡のブレードのサイズの好みはあるか?指示の挿管チューブのサイズ・種類は何?と考えることはたくさんあります。
手術体位は仰臥位、側臥位、腹臥位、砕石位、ビーチチェア位、開脚仰臥位…ラパロなどの鏡視下手術では、手術台を傾ける術中ローテーションで視野を確保することも多く、手術部位によってローテーションの方法は様々!準備する物品は、手術によって本当にたくさんあります…
これらのことを準備するのは、基本的には外回り看護師の仕事になります。
患者さん入室後~手術中
- 麻酔科医の麻酔介助や薬剤の投与(epi、spi、気管挿管、動脈路確保、CV挿入などなど)
- 手術の体位固定と執刀医との調整(執刀医の手術操作のやりやすさと、患者さんにとって無理な姿勢じゃないか?必要であれば執刀医に声をかけ、体位固定し直すこともあります)
- 手術中、術野に合わせて必要時に必要な介助(インプラントなど必要物品を清潔野に出す、セメント時などのタイムキーパー、麻酔科医の指示薬剤のミキシング、DrのPHSの対応など)
患者さんが入室して、麻酔導入が始まると、基本的な流れはあるもののその場その場で臨機応変な対応が求められます。
今、どういう状況か?麻酔科医は何を考えている?手術は今どういう動きで、必要な介助は何?
慣れるまでは、常に頭を働かせて考え続けなければいけません。
そして、麻酔科医や執刀医ごとに使用する物品や薬剤が違うことが多い…!年々、覚えられなくなっていく気がします…( ;∀;)
手術後、患者さん退室まで
- 麻酔科医や患者さんの背景に合わせた抜管の準備・介助(呼吸器疾患の有無や、麻酔科医の抜管方法に合わせて準備する物品は変わってきます)
- 創部・患部の保護(ギプスやシーネ固定や包帯の巻行、ガーゼのテープ固定など)
- 抜管後、覚醒状況の確認や疼痛コントロールができているかの確認
- 病棟看護師への申し送り
抜管方法も、麻酔科医や患者さんの背景によって本当に様々です。心疾患があって、あまり急激に覚醒させたくない…呼吸器疾患があり、抜管は慎重にやりたい…そもそも加圧抜管しかしないなど、繰り返しになりますが本当に様々。。。
疼痛コントロールに使用する薬剤もロピオンだったりアセリオだったり、ボルタレン坐薬だったり麻薬だったり…
ここでも、麻酔科医と相談しながら薬剤を準備していきます。
麻酔覚醒時も、麻酔導入時と同じように事故が起きやすいです。抜管後に急に呼吸状態や意識レベルが悪くなることもあり、患者さんが退室するまで気は抜けません。
「外回り」業務を行う上で、大切なこととは?
先を読む力。麻酔科医や執刀医の指示を待ってから行動していると、すべて後手に回ってしまいます。次、何をするのか?を予測することが、スムーズな麻酔導入や手術操作につながると考えます。
必要なときには、他スタッフやDrに意見する力。患者さんは全身麻酔中は眠っています。手術体位は、無理な体位ではないか?手術操作による痛みが強くないか?(眠っていても、痛みを感じているためバイタルサインは変動します)患者さんの代弁者になって、時には周りに意見することも必要です。
いろいろな疾患への理解。同じ手術でも、2人と同じ患者さんはいません。既往歴などの患者さんの背景に合わせて必要な物品は異なります。いろいろな疾患への理解が、安全な手術につながります。
とにかく、「この人は今何を求めてるのか?」を考える気遣い力。スムーズに気持ちよく麻酔・手術を行うためには、外回り看護師の気遣いが大切。わたしが新人のとき、尊敬する先輩から「手術をスムーズに終わらせたいなら、外回りのあなたがいろんなことに気を遣うこと。言い方や態度もそう。自分の言動が、患者さんの負担に直結すると思って仕事して」と言われたこと、10年たった今も忘れられません。
まりまが考える「外回り業務」の面白さとは?
- 麻酔科医の好みやクセを覚え、スムーズに介助できたときの達成感!麻酔科医にも一目置いてもらえるような存在になりたいと思いながら仕事しています。
- 術野を見て、必要なものを要求される前に出せると、手術がスムーズにみんなが気持ちよく進められます。
- 麻酔への知識を身に付けていくと、奥が深くてどんどん知りたくなる!!麻酔看護って、本当に奥が深いなと思います。
- 患者さんが無事退室して、麻酔科医・執刀医・器械出し看護師・MEなどとお「お疲れ様でした!」と言うときの達成感!やり切った感が半端ないです。
良くも悪くも、Drとの距離が近いオペ室。その分、わからないことや自信がないことはすぐに質問ができ、直接指導してもらえることも多いので非常に勉強になります。
医療は日々進化していくため、新しい手技や器械はとにかく使ってみたいタイプのDrがいると、勉強することは際限がなく果てしない。でも、確実に自分のスキルアップにつながります!
わたしは、外回りでも器械出しでも新しいことに挑戦していきたいタイプなので、非常にやりがいがあります。
以前は、大きな病院で全科に対応できるオペ看になりたい!と思っていたこともありました。大きな病院にいていろんな科に携わっている方が、確かに経験は重ねられます。しかし、わたしのように単科の病院にいても、自分の頑張り次第でスキルアップすることは可能です。
麻酔看護、手術看護が大好き!外回り業務もやりがいがあります
病棟も外来もだと思いますが、知識が深められるか、やりがいを感じられるかはすべては自分のやり方次第。
わたしは今の仕事が大好きだし、他スタッフやDrにも恵まれ、毎日勉強させていただいています。育休中の今も、絶対に復帰してまたオペ室業務に携わりたいなぁと毎日思っています。
オペ看の仕事って、外回り業務って、よくわからない。でも興味がある。
そんな人はぜひ語り合いましょう!手術室の魅力についてなら、たくさん話ができます(^^)/♪
余談ですが、当院の麻酔科医の先生は「病棟みたいに、患者さんの都合に振り回されずに自分の仕事に集中できるのが、絶対に手術室のいいところ!」と断言していました。
起きている患者さんと関わることは少ないので、そこにやりがいを感じる方にはおすすめできませんが、ぜひ皆さんに手術室で働くことを一度考えてみてほしいなと思います♪
最後までお読みいただき、ありがとうございました(*’▽’)
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